ユネスコスクール

UNESCO Associated School

東京ゆりかご幼稚園は、
UNESCO
(国連教育科学文化機関)
より
認定を受けた
「ユネスコスクール」です。

ユネスコスクール

2018年、本園が推進してきた「ESD(持続可能な開発のための教育)=里山教育」を中心とした取り組みが、文部科学省、UNESCOの審査を経て、「ユネスコスクール」として認定されました。
現在、国内外のユネスコスクール(幼・小・中・高・大学)やユネスコ関係機関と連携を深めながら、UNESCOが提唱する「地球市民」としてのグローバルな価値観の教育を推進しています。

ユネスコスクール
とは?

ユネスコスクールは、1953年、ユネスコ憲章に示された理念を学校現場で実践するため発足しました。文部科学省及び日本ユネスコ国内委員会では、ユネスコスクールをESDの推進拠点として位置付けています。世界182カ国で1万2000校以上が加盟し、国内では2023年現在1115校の幼稚園、小学校・中学校・高等学校・大学がユネスコスクールとして活動しています(国内の幼稚園は33園、都内では本園が唯一の認定園)。ユネスコスクールは、そのグローバルなネットワークを活用し、世界中の学校と交流し、生徒間・教師間で情報や体験を分かち合い、地球規模の諸問題に若者が対処できるような新しい教育内容や手法の開発、発展を目指しています。

※ユネスコスクール
公式Websiteから抜粋
https://www.unesco-school.mext.go.jp/about-unesco-school/aspnet/

ESDとは?

ESD(Education
for Sustainable
Development)とは?

今、世界には気候変動、生物多様性の喪失、資源の枯渇、貧困の拡大などさまざまな問題があります。ESDとは、これらの問題を自らの問題として主体的に捉え、人類が将来の世代にわたり恵み豊かな生活を確保できるよう、身近なところから取り組む(think globally, act locally)ことで、問題の解決につながる新たな価値観や行動などの変容をもたらし、持続可能な社会を実現していくことを目指して行う学習・教育活動です。

学校教育における
ESDの位置付け
-新学習指導要領と
ESD-

2016年に発表された中央教育審議会の答申には、「持続可能な開発のための教育(ESD)は、次期学習指導要領改訂の全体において基盤となる理念である」とあります。そして策定された幼稚園教育要領、小・中・高等学校学習指導要領において、「持続可能な社会の創り手」の育成が掲げられました。

ESDで目指すこと

(1)持続可能な社会づくりを構成する「6つの視点」を軸にして、
教員・生徒・園児が持続可能な社会づくりに関わる課題を見出します。

持続可能な社会づくりの
構成概念

  • 01

    多様性

    いろいろある

  • 02

    相互性

    関わりあっている

  • 03

    有限性

    限りがある

  • 04

    公平性

    一人ひとり大切に

  • 05

    連携性

    力合わせて

  • 06

    責任制

    責任を持って

(2)持続可能な社会づくりのための課題解決に必要な「7つの能力・態度」を
身につけます。

ESDの視点に立った学習指導で重視する能力・態度

  • 01

    批判的に考える力

  • 02

    未来像を予測して
    計画を立てる力

  • 03

    多面的・総合的に
    考える力

  • 04

    コミュニケーション
    を行う

  • 05

    他者と協力する力

  • 06

    つながりを尊重する
    態度

  • 07

    進んで参加する態度

※引用:文部科学省「持続可能な開発のための教育」
国立教育政策研究所「学校における持続可能な発展のための教育に関する研究(最終報告書)」

ESDは
幼児教育そのもの

「幼児期には難しいのでは?」と思われるかもしれませんが、実は幼稚園での日々の遊びや生活の中で、当たり前の様に行われているもので、小中高等学校よりもむしろ身近な考え方なのです。
例えば「お友達と仲良く遊ぶ」は、図でいうと、「平和、人権、ジェンダー平等」などに関連します。
年長が行っている「稲作」は、「環境、文化多様性、地域の文化財、持続可能な生産・消費、生物多様性、気候変動、エネルギー」と、実に多くの項目が関わってきます。
このように、幼稚園の生活、特に本園での環境を通した教育においては、ESDに関連する多くのことを主体的に学ぶことができます。遊びや生活を通して諸課題を自分事として捉え、行動し、価値観を養っていくなかで、小学校以降に続くESDの基礎が形成されていくのです。

引用:文部科学省 
持続可能な開発のための教育
https://www.mext.go.jp/unesco/004/1339970.htm

ESDの基本的な考え方

どんな
活動があるの?

2022年度の「ユネスコスクール活動報告書」をご紹介します。
詳しくはユネスコスクールのWebサイトでもご覧いただけます。

ユネスコスクール活動報告書

本園では、「調和のとれた教育、幼児の主体性、自然と関わりながら」を教育理念とし、園庭の豊かな自然や周囲の里山林と主体的に関わり、生活や遊びに取り入れ、学びにつなげていこうとする一連の活動を、ESD「里山教育」として位置付け、実践を通して全人格的な発達を促し、生きる力の基礎を育むことを目標としています。
これらは教育課程、年間・月間指導計画によって位置付けられ、「環境を通した教育」および「主体的、対話的で深い学び」への具体的実践として行われています。
2022年度は、これまでの活動を基礎に、さらに充実、発展させることができました。
本園における多様なESD活動のうち、以下5項目について報告します。

「食育」、「環境教育」、「伝統文化教育」の活動として「稲作、畑作」

「環境教育」の活動として「里山再生」

「生物多様性」の活動として「ムササビとの関わり」

「環境教育」、「伝統文化教育」の活動として「養蚕」

「環境教育」、「伝統文化教育」の活動として「陶芸」

稲作、畑作

園児主体の土作り体験

園内の田畑を使い、野菜、麦、稲を育てるなかで、土作りから園児が主体的に関わります。
大きなコンポストには、給食の野菜くず、稲作で生じたもみ殻や米ぬか、飼育ヤギのふん、野ウサギのふん、近隣牧場の牛ふんなどが加わり熟成され、また園内「里山林」の落ち葉は「葉っぱのプール」に集められ、落ち葉遊びを経て腐葉土となります。
これらを堆肥として田畑にすき込み、園児と共に土壌を作っています。

畑から食卓へつながる学び

畑では園児が種をまき、雨水タンクの雨水や井戸水で潅水(かんすい)し、毎日世話をして育てた野菜、小麦を収穫し、調理保育や給食の材料となっています。
残った野菜くずは畑の肥やしにし、食の循環について体験を通して学んでいます。

年長は園庭の棚田で8カ月をかけて稲作を行います。
1から10までできるだけ園児が自ら行うことで、食の大切さ、汗水を流し物事を成すことの大切さを知ります。

生態系を守るための清掃と整備

田んぼの生き物が棲みやすい環境を整えるため、田んぼ、小川ビオトープの清掃・整備を子どもたちと行います。
堆積したヘドロを取り除き、その中からさまざまな水棲生物を救出して戻したり、小川でゲンジボタルの生育を促すため、年長が陶芸粘土の型に使用した石を小川沿いに敷き詰め、コケの生育を促したりすることによって、持続可能なビオトープ環境の維持に努めています。
さらに日々の生き物採取、飼育、観察等を通して、生命の尊厳とつながりを学んでいます。

古農具を使った稲作体験

脱穀、もみすり、精米作業は、千歯扱(こ)き、唐箕(とうみ)、回転足踏み脱穀機などの古農具を使用し、弥生時代から行われている手作業で行うなど、幼児にとって仕組みが理解しやすい原始的手法に特化し、日本古来の稲作について体験を通して知ってもらいます。

家族で味わう稲作の感動

環境整備や里山保全を行う有志の会「鉄腕クラブ」では、上記の稲作を家族で経験し、田植えから収穫までの感動を家族で味わうことができます。
また、新型コロナウィルスの影響で中止していた「秋祭り」を開催し、全学年と小学生の親子も脱穀を経験することができました。

子どもの森づくり
(里山再生)

豊作のドングリで進める樹木の世代交代

周囲の里山林が持続可能であるために、園内外のコナラ、クヌギ等のドングリを拾い、園庭や周囲の緑地帯の各所に「ドングリ畑」を作って育てています。特に2022年度は、全国的に流行しているナラ枯れの影響により、本園の里山林「森の広場」において、樹齢50年規模のクヌギやコナラを数本伐採せざるを得ない状況となっています。しかし、これまで毎年行ってきたドングリ播種(はしゅ)によって、結果として樹木の世代交代を持続可能な形で行うことができ、活動の重要性、必要性を改めて実感することになりました。
また、昨年、一昨年に続き、今年もドングリが豊作であったため、より多くの場所に播種することができました。

東日本大震災の津波で消失した東北の森を再生するため、東北の保育園児が拾ったドングリを送ってもらい、園庭で育て、定植可能な高さまで育った苗を東北に送り植樹してもらいました。送り状、礼状等のやりとりにより、心の触れ合いも見られました。

ムササビとの関わり

ムササビのための環境づくりと観察

今年度も年長の活動として、園庭の森の広場に棲息するムササビの観察と環境づくりを行ってきました。歴代の年長が作り設置した巣箱が古くなったため、修復し新たに絵を描き再び設置、また、ナラ枯れの影響で巣箱があった木を伐採せざるを得なくなったため移設先を考え設置しました。

ムササビの専門家から、「冬の間に餌が少なくなる」ということを聞き、ドングリ餌台を作り、拾っておいたドングリを定期的に置くようにしたところ、夜間に食べにくる様子がカメラに映っており、その生態についてさらに深く関心を持つことになりました。

巣箱カメラで深まるムササビ観察

2021年度にNHK「ダーウィンが来た!」で設置した巣箱内を観察するためのカメラを、幼稚園で購入したカメラと入れ替え、いつでも園児が巣箱の中を観察し、そのデータを振り返ったり抽出したりできるようにしました。これによって、どの巣箱に何時に戻り、何時に出かけるかを毎日記録できるようになりました。
こうして、ムササビの巣箱内での暮らしをより詳しく把握できるようになり、愛着心、興味、関心、知識が深まると、「もっと知りたい」という知的欲求が促されるようになりました。そして、また新たな疑問が生じると、友達や先生と考えたり、相談し合ったり、専門家に聞いたりして疑問を解消するというアクティブラーニングの好循環が生じ、探求的な学びの基礎を育むことに大いに役立ちました。

広がるムササビ調査のフィールド

NHK、八王子市、町田市、ムササビ専門家の協力を得て、園内の森だけでなく、隣接の46haの七国相原特別緑地保全地区の森にも巣箱やカメラを設置し、森全体にどれだけのムササビが棲んでいるか調査し、その生態についても調べることとし、年長園児は森の中のムササビが棲んでいそうな場所を散策し、樹洞(じゅどう)を探したり巣箱を付けて観察しました。

ムササビ保護から広がる生物多様性の理解

天敵の存在に気づき、保護するための手立てを考え、防護用のトタンや粘着テープ、傘、腰蓑などを設置しました。その一方で、ムササビ以外にもさまざまな生き物がこの森に棲んでいることに気づき、ムササビと同じように家族を持ち一生懸命生きているという事を知り、生物多様性への理解も深まりました。
園児が生き物に関心を持ち、生き物にとって棲みやすい環境を自分事として考え、行動に移していく一連の活動から、「学びに向かう姿勢」や、「持続可能な社会の担い手としての価値判断につながる姿勢」が育まれていく様子を確認できました。

養蚕

秋祭りで体験する糸取りと伝統

例年、全学年で蚕を育てていますが、昨年度同様、年中児が繭から座繰り器で糸を取り、灯籠を作りました。さらに新型コロナウィルスの影響で中止していた「秋祭り」を開催し、年中、年長、小学生の親子も糸取りを行うことができました。「織物の町」である八王子市の歴史・文化に触れ、蚕を通して生き物への愛着を深め、慈しみの気持ちを育むとともに、命をいただきながら私たちの生活に欠かせない衣類や生活用品が作られていることを一連の体験を通して知り、感謝の気持ちを持つことができました。

陶芸

粘土から学ぶ古の文化と創造力

園の周辺地域一帯は、古代の窯の出土数が国内一であり、良質の粘土が採れるため、園庭の土を掘り起こし、年長が地層を観察しながら粘土として使えそうな土を採取しました。これを細かく砕き、川石を型にして皿の形に成形、たき火にかけ焼成し、普段から泥団子作りなどをして遊んでいる園庭の土が、手間暇をかけることで皿になっていく過程を楽しみ、関心を深めていく様子が見られました。体験を通して古の文化に触れながら、想像力、創造力を育むことができました。